【Vol.04】吉川共久|町の人を温かく送り出すアトランティックコーヒースタンドオーナー

お話を伺ったのは 吉川共久さん
1975年12月10日、愛知県出身。14歳のときにサーフィンをはじめ、19歳のとき良い波を求めて千葉県に移住。釣ヶ崎海岸(志田下)をホームとし、プロサーファーとして活躍。さまざまなコンテストに出場し、主な戦績は1998年のNSA第7回東日本サーフィン選手権大会 (メ ン・シニア ) 1位など。現役引退後の2015年4月、Atlantic Coffee Standをオープンし、良質なコーヒーを提供しながら、町行く人やサーファーたちを温かく見守っている。
201126_2072_pf.jpg

気軽にふらっと行き来できる場所に

「なんというか......寂しさはありますよね。コンビニや自販機で、気軽に楽しめるというものになっているのは。コーヒーってやっぱり煎れるのにそれなりの手間もかかるものだし、海外では、"本物の"飲み物という認識があるんですよ」

そう話すのは、一宮町の海岸沿いに店を構えるAtlantic Coffee Stand(アトランティックコーヒースタンド)」のオーナー、吉川共久さんだ。プロサーファーとして活躍後、2015年4月にこの店をオープン。さまざまな国のサーフタウンでコーヒー文化に触れてきた吉川さんにとって、日本という国の中でのコーヒーの在り方に、少し違和感を感じる部分があったようだ。

201126_2053.jpg

「安価で気軽に楽しめるのはいいことかもしれませんが、そこには何の会話もなかったりしませんか。僕が見てきた海外の国では、多くの人が早朝にお店に立ち寄ってコーヒーを飲み、すっきり目を覚まし、仕事に向かう人もいれば、波のチェックに向かうサーファーもいる。そこで提供されるのは、"本物の"コーヒー。なかなかそういうお店ってなかったので、いっそ自分でやったほうが手っ取り早いなと思ってオープンさせていただきました」

朝6時、日の出とともに開店し、お昼前の11時に閉店というコーヒースタンド。もちろんコーヒー豆にも強いこだわりがある。パプア・ニューギニアサーフィン親善大使を務めている縁もあり、コーヒー豆は現地の農家から買い付けた希少なものを使用。ハンドドリップで煎れるコーヒーの香りが漂い、まるでカリフォルニアの雑貨屋のような店内は居心地が良く、店を構えるうえで大事にしている「気軽にふらっと行き来できる場所」となっている。「良い波がある町には、朝から盛り上がるお店やカルチャーが存在する」ことを見てきた吉川さんだからこそ創り出せる、絶妙な雰囲気が漂っているのだ。

サーフィンの上達のために一宮町へ移住

201126_2072.jpg

吉川さんがこの町にやってきたのは、20年以上前のこと。名古屋で生まれ、サーフィンに没頭していた時に初めて一宮の波を経験し、この町に移住することを決意した。

「高校生の長期休みの期間に1週間ほどこちらに泊めさせてもらったのですが、サーフィンがしやすい場所だなとそのとき感じました。地元も良い場所ではあったんですけど、とにかくあの頃は上達したいと思っていたので......。コンスタントに良い波があり、1年間通して波を楽しめる。何よりプロサーファーもいて、日本中からサーフィンがうまくなりたい人が集まっているこのエリアは魅力的だと思って移り住むことにしました」

都会の喧騒を好まない吉川さんにとって、自然に囲まれたこの町の住みやすさは十分すぎるほど。

「必要なものは手に入るし、都内への交通の便も悪くない。山の方には、おいしいお米もあるし、トマトや梨、いちごなど、季節ごとに野菜や果物も楽しめます。最近では、無農薬・有機にこだわって農業をはじめるサーファーも多いんです。この町に住んでいて、不便を感じたことは一度もありませんよ」と話すように、一宮は理想的な町だったのだ。

「田舎と都会の中間のような心地良さがあるのですが、それは波乗りをする人がたくさんいることで生まれているのかなと思っています。言葉で表現するのが難しいのですが、海からも、人からも、何かに見守られているのを感じることができます。土地の波動と言いますか......。それが何なのかはわかりませんが、ずっとここにいたいと思える場所、住みたい場所だなと僕は思いました。初めて来た人にとっても、また来てみようと思える町なんじゃないかと思います」

穏やかな気持ちで波を待つことは大切

201126_2036.jpg

吉川さんにとってのお気に入りの場所は、もちろん海。「すごく贅沢な景色が身近にあるのが、一宮の海の魅力」と語るように、美しい朝日と夕日を見ながら波に乗るのが生活ルーティーンとなっている。またトップサーファーであり日々この海を見ている吉川さんは、多くのサーファーたちの情報源ともなる。「今日の波、どう?」と情報を集めにお店へやってくるサーファーがたくさんいるのだ。

「天気予報や天気図、風向きとかを見て、波の予測をしています。ただ、こういう天気だからこう、というのはなくて。潮目や波のうねりの向き、風向き......いろんな要素が絡み合って『今日はいい波だ』というのがわかるんです。でも、同じ波っていうのは存在しないですし、同じ天気予報、天気図でも日によって違うことは当然あります。やっぱりそこは経験。どこの海でも、毎日見ている人の情報がもっとも信ぴょう性が高いですからね」

201126_2024.jpg

一宮の波を愛し、波に愛される吉川さん。「コンスタントに質の高い波がやってくる」この海ではあるが、サーファーたちにとって波待ちも大切な時間。ただ待っているだけではなく、さまざまなことを考える時間でもあるのだ。

「人生って、思うようにならない瞬間ばかりじゃないですか。そういう時ってイラっとすると思うんです。波を待つ時も同じで、乗れそうで乗れなかったということもよくあると思います。そういう時に、感情に反発せず、こうすれば改善できるんだろうなと自分の中でなるべく穏やかになろうと意識しています。波乗りでも人生でも、こうしてやろうという欲望が生まれてくると思いますし、いいことではあると思うのですが、ある程度の線引きも大事だと思っていて。こういう波に乗ってやろうという気持ちは控えめにして、気持ち良く波を楽しめるように待つ、というのは意識しているところです」

「いってらっしゃい」と気持ち良く送り出したい

201126_2043.jpg

一宮の町の空気感を体現するような、良い意味でのユルさをまとい、この海への強い愛情を持ち続けて暮らす吉川さん。今でも十分すぎるほど幸せな時間を過ごしてはいるが、やはりこの町に対する愛ゆえに、こうなってほしいという理想も持っている。

「このペースで暮らしていけるのが僕の中では心地が良いですし、このまま美しい海と山が保たれていることは本当に幸せだと思います。ただ、あえて言うのであれば、家族で楽しめる場所、公園とか広場があればいいなと思います。海外のサーフタウンに行くと、町に必ずきれいな公園があって。そこでみんなが素敵な時間を過ごしていました。幅広い世代が、遊んで楽しめるような場所があったらいいと思っています」

より多くの人が楽しめ、幸せを感じられる町へ。吉川さんも、町民やサーファーたちに一つでも多くの笑顔が生まれるよう、これからも店に立ち続ける。

「コーヒーを飲んだり食事をしたりしていただくのはもちろん、波の情報やポイントのアドバイスができると思うので、ぜひ気軽に足を運んでいただければと思います。訪れてくれる皆さんそれぞれ、違った思いを持っていらっしゃると思いますし、話し掛けられたくない人もいれば、話したいという人もいるでしょう。僕としては、なるべくその邪魔をしないように、『いってらっしゃい』と気持ち良く送り出すように心掛けています。皆さんの気持良さを拾っていくのが、僕にとっての小さな幸せ。そういうシンプルなことを、難しいことでもあると感じてはいるんですけど、皆さんと共有できる場所にしてきたいと思います」

↓インタビュームービーはこちら

施設情報
201126_2082.jpg
Atlantic Coffee Stand(アトランティックコーヒースタンド)

日の出と共にオープンする、プロサーファー吉川共久さんが営むコーヒーショップ。現地から直接買い付けた、パプアニューギニア産の豆を使ったコーヒーを朝の目覚めの一杯にどうぞ。

住所 :千葉県長生郡一宮町一宮10091-1
電話番号 :090-1848-0469
facebook :https://www.facebook.com/atlanticcoffeestand/
営業時間 :[月・火・木・金]6:00~11:00、[水]6:00~15:00、[土・日]5:00~15:00

Share us on Facebook / Twitter

Access

PARASOL
THE SURFSIDE VILLAGE ICHINOMIYA
〒299-4301
千葉県長生郡一宮町一宮10113-3
車でお越しの方

▼東京方面から
京葉道路・湾岸道路 >[千葉東JCT]>
千葉東金道路 >[東金IC]>
国道126号・東金九十九里有料道路 >
[真亀IC]- 県道30号線

▼神奈川方面から
東京湾アクアライン >[木更津JCT]> 首都圏中央連絡自動車道(圏央道)
> [茂原長南IC]>
国道409・128号・県道228

電車でお越しの方

JR京葉線・特急わかしお、もしくはJR外房線で「上総一ノ宮(かずさいちのみや)駅」にて降車後、タクシーで5分。

Contact

WEBからお問い合わせ
お問い合わせはこちら