【Vol.10】ザ・ファーマーズ|元気な野菜を届けて一宮を元気に

お話を伺ったのは ザ・ファーマーズさん
サーフボード工場を運営する森山鉄兵(もりやま・てっぺい)さん(中央)と大西兼司(おおにし・けんじ)さん(左)、蕎麦屋を営む櫟原貴司(いちはら・たかし)さん(右)、他1名で2020年5月に結成。一宮町内の3カ所で、約700坪の畑と温室、約500坪のキウイ農園で日々農作を行っている。「ザ・ファーマーズ」の由来は、バイロンベイにある「ザ・ファーム」という、農園にカフェなどを併設した複合施設を目指したいとの思いから。

今できること、それが農業だった

世界中で新型コロナウイルスが猛威をふるった2020年。延期、休業、自粛......多くの物事にストップをかけざるをえなくなった世の中で、"こういう時だからこそ"と新たに立ち上がった男たちが、ここ一宮町にいた。

「今できることはなんだろう......その答えが、農業だったんです」

そう話すのは、サーファー仲間の4人で結成した「ザ・ファーマーズ」の一人として農業を営む、櫟原貴司さん。普段は都内の蕎麦屋で働きながら、兼業農家として多くの野菜や果物たちと日々向き合っている。

「緊急事態宣言が出された去年の春頃は、みんな時間があったけど、何をすればいいのかわからない時間を過ごしていました。そのようななか、頭のどこかで『農業かな』と、もともとみんな考えていたんです。僕自身も、お酒も飲める蕎麦屋を都内でやっているのですが、自分で育てたおいしい食材を使った天ぷらやおつまみをお客さんに提供できたらいいなという思いは持っていました。『農業の始め方』みたいな本も少し読んでいましたが、しっかりと読んで勉強していたというわけではなく、途中まで読んで本棚に置いてしまっていましたが(笑)」

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メンバーの一人である森山鉄兵さんが発起人となり、櫟原さんたちがそれに賛同する形で農業をスタートすることになった。もともと目を付けていたという温室ハウス付きの農場を借りる形で4人での活動がはじまったが、当然、「よし、はじめよう」でできるほど農業は簡単なものではない。

「野菜を育てはじめて1年が経ちますけど、今でも農業のノウハウが僕らに備わっているかと言われれば、そんなことはありません。農場のオーナーさんは一宮で29代続く農家の方で、『まずは草を刈れ』『今日は種を撒け』『今日は水やりだ』『明日は雨だからこれをやれ』という指示のもと、毎日農業を教わっています。みんな兼業なので、それぞれが来られる時間に来て、集まって、お互いに配慮しながら手分けしながらやっています。一人では絶対にできなかったですし、"4人で一人前"じゃないですかね(笑)」

一宮の山の魅力も知ってほしい

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現在は、一宮から週に何度か都内の蕎麦屋へ通い、それと並行して農業も行っている櫟原さん。東京生まれ、東京育ちだが、一宮にやってきたきっかけはやはりサーフィンだった。

「高校生のときに、地元の先輩にはじめてサーフィンに連れていってもらいました。当時は、湘南の海によく行っていましたけど、だんだんと一宮に通うようにもなって。大人になり、蕎麦屋の修行先が新潟県の十日町でそこに4年間住んでいたのですが、水がきれいで、空気がおいしくて、自然のパワーを感じながらの生活に魅力を感じるようになったんです。東京に戻ってきてからも、もっと自然を感じたいという思いが常にありましたね」

自然への思いを胸に、蕎麦屋としての仕事があるときは都内で、休みのときは一宮に借りたアパートで寝泊まりをする"2拠点生活"をすることに。2つの生活の両立をしばらく続けた後、一宮に拠点を一本化することを決めた。

「都内の仕事と一宮での生活を両立するなかで、こっちがメインでも大丈夫だなと思ったので、家を建てることにしました。新潟での修行で田舎の生活は経験していたので、必要なものを用意しておけば特に不便さを感じないのはわかっていましたし、今も生活に困ることはありません。周りにも、都内で働いている方は結構います。何より、このワイルドな自然環境が僕は大好きですし、農業をやっていると近所の人が手伝ってくれます。本当に温かい人が多いんです。都内の人と、一宮の人の雰囲気のギャップは日々接するなかで感じているのですが、もう東京には住めないなと思いますね(笑)」

すっかり"一宮人"となり、町の魅力である海をいつでも楽しめるようになった。他県の人も、「一宮と言えば海」というイメージを持っているだろうが、「自然の魅力は海だけじゃないですよ」と櫟原さんは言う。

「もちろん、海は好きですよ。コンスタントに波が立つ一宮の海は、サーファーにとっては最高のスポットだと思います。でも、海から車で5分ちょっと走れば、鳥のさえずりが聞こえる素晴らしい山の自然がそこにあるのも一宮の良さ。僕たちは山間に500坪くらいのキウイ農園も持っているのですが、農業をはじめたことで、山の良さをより感じられるようになりました」

バイロンベイで見た循環型農業を一宮でも

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農業をはじめて約1年。兼業農家ではあるが、決して生半可な気持ちで行っているのではなく、明確な理想と、この一宮の町の発展に貢献したいという強い想いが彼らのベースになっている。

「森山は、普段はサーフボード工場を切り盛りしていて、毎年冬になるとオーストラリアのバイロンベイに行っているのですが、そこで彼は、自然を大切にする暮らしをその目で見ているんですね。農薬を使わず、自分たちで食べるものを育て、家庭やレストランで出たゴミは堆肥(コンポスト)にして、また土に返す。そして、その土でまた野菜を育てるという生活。そういう地球に優しい生活の話を聞いて、ここ一宮でもそれを実現したいと思っています。それが、僕たちが農業を行ううえでもっとも大切にしているところです」

その理想のもと、ザ・ファーマーズの農業は農薬をいっさい使わず、肥料も有機物を使用。当然、虫が付いたり、病気になったりという難しさもあり、生産性も決して良いとは言えない。それでも彼らは、そのやり方を曲げることはない。

「やっぱり健康な野菜を育てて自分で食べると、スーパーで買うものを食べるのとは気持ちが全く違うんですよね。自分でつくったものなので、愛情もこもっている。家族でそれを食べているときって、やっぱり嬉しいなと感じるんですよ。僕たちは、そういう思いを一宮の人たちに感じてもらいたいと思っています。健康な野菜を食べて、みんなで健康になっていきたいんです」

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バイロンベイで見た、環境に優しい循環型農業の実現に向けて、彼らにはまだまだやらなければいけないことはたくさんある。

「いま僕たちがやろうとしていることの一つとして、町に『堆肥ステーション』というのをつくりたいと思っています。地域の方たちに植物性の生ごみを持ってきてもらって、それを土に返すことができる場をつくろうと思っています。ちょうど最近も、都内でコールドプレスジュースを提供しているお店から、果物の搾りかすをいただいてきました。やっぱり元気な野菜を育てるためには、根っこから植物に力を与えることが一番良いですからね。土が元気なら、野菜も強くなる。もしそれが実現できたら、僕たちももっと良い農業をやれると思いますし、環境に対する思いを持った町として進んでいけるとも思います。健康な土でできた健康な野菜を、ぜひみなさんに食べてもらいたい。そうなれば最高ですね」

決して楽な道ではないが、理想の農業に向けた歩みはまだスタートしたばかり。一宮の町を農作物で元気にするべく、ザ・ファーマーズは今日も畑に足を運んでいる。

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